エロゲ史に残る名作!同級生シリーズの誕生から現在に至るまで
PR投稿日: 2023年08月02日 アダルト豆知識
エロゲ(アダルトゲーム)の歴史を語る上で、決して避けて通ることのできない名作があります。それは『同級生』。「東のエルフ、西のアリスソフト」と讃えられ、エロゲメーカーの双璧として業界を牽引したエルフの代表作であり、記録的な大ヒットを飛ばした伝説のエロゲについて、その誕生から現在に至るまでの歴史を解説します。
『同級生』とはどんなゲームか
同級生シリーズは、かつて存在した美少女ゲームメーカー・エルフから発売され大ヒットしたパソコン(PC)用18禁アドベンチャーゲームと、その続編や関連作品を含めた作品群のことを指します。
PC版を始め、家庭用ゲーム機への移植版や、PCの新しいOSに対応し、グラフィックや内容の一部を変更したリメイク版、さらには番外編やアニメーション、オーディオドラマなどを含めると膨大な量にのぼり、このシリーズが絶大な人気を誇ったことを裏付けています。
ゲーム内容を簡単に説明しますと、プレイヤーは自分の分身である主人公を操作し、街中を散策してヒロインたちと交流を深めていきます。最終目的はヒロインと結ばれることです。
当時はこのようなジャンルのゲームが数多く発売されていて、「ナンパゲーム」など呼ばれていました(ちなみに、PC版同級生の実行ファイルには「nanpa.exe」という名前がついています)が、どれも同級生ほどの大ヒットには至りませんでした。
それでは、同級生は何が他のナンパゲームと違っていたのでしょうか。
同級生がヒットした理由として特に大きいのは、「キャラクターデザイン・グラフィック」と「シナリオ」であると考えられます。
同級生のキャラクターデザインは、竹井正樹氏が担当しました。キャラクターの立ち絵や、イベントシーンの原画も同氏によるものです。
アニメーターから転身した竹井氏による美麗で繊細なイラストレーションは、他のエロゲとは一線を画す存在感を放っていました。卓越したデッサン力によって描き出される、ヒロインの憂いを帯びた表情や瑞々しい肉体は、エロティックでありながらも、清潔感すら感じさせるような美しさだったのです。
現代のエロゲでは複数の原画家が分業することも珍しくありませんが、主人公と同年代のヒロインをはじめ、年下のロリ系少女から年上のお姉さんまで、個性豊かで魅力的なヒロインたちを一人で描き上げた竹井氏の画力には驚かされます。
シナリオを担当したのは、エルフの創業メンバーだった蛭田昌人氏です。
同級生のシナリオが画期的だったのは、ヒロインの人物像を掘り下げ、主人公と結ばれるまでの過程をじっくりと描いた点です。
当時氾濫していたナンパゲームの大半はセックスシーンありきで、そこに至るプロセスを軽視したものばかりでした。同級生では、イベントを重ねていく中で、さまざまな問題や困難に向き合い、乗り越えながら愛を深めていく過程が丁寧に描かれていきます。そうしてヒロインへの愛着がピークに達したところでセックスシーンがやってくるのです。苦労の末に辿り着いたセックスと、2つか3つの選択肢に正解しただけで簡単に見られるセックスとでは、当然のことながら興奮度合いや、達成感や感動がまるで違います。
このようなシナリオ構成は、セックスにストーリー上の必然性を持たせるという役割も果たしていました。
そしてエンディングでは、ゲーム中で結ばれた2人の未来の姿が描かれます。ひと夏の恋を求めて始めたナンパが、いつしか忘れられない思い出に変わっていくのです。同級生のストーリー性を重視したシナリオは、後発のエロゲに大きな影響を与えました。
蛭田氏の手掛けたシナリオで特徴的なのは、細部や寄り道にも手を抜かないことです。何気ない主人公のモノローグにも独特なセンスのギャグやユーモアが散りばめられていますし、話の本筋とは無関係な背景やモブキャラにまで固有のテキストが用意され、細かいネタが仕込まれています。一見ムダにも思えるようなディテールの積み重ねによって、画面の中にある街やキャラクターが、まるで実在するかのように生き生きと感じられてくるのです。
竹井氏のイラストと、蛭田氏のシナリオが車の両輪のように噛み合って、同級生はエロゲ史に残る名作となったのです。
『同級生1』について
記念すべきシリーズ第1作目は、1992年に発売されました。さきほど述べたようなグラフィックやシナリオなどの斬新さから人気を博し、PC向けのアダルトゲームとして初めて、販売本数10万本を超える大ヒット作となりました。
先負学園3年生の主人公は、高校最後の夏休みを利用して恋人を作るべく、自分が住む先負町と、隣町の矢吹町を奔走する……というのが大まかなストーリーです。夏休み前半はナンパ資金を貯めるためのアルバイトに費やされたため、ゲーム期間は夏休み後半の8月10日から8月31日まで。果たして3週間のタイムリミット以内に、主人公は運命の人と結ばれることができるのでしょうか。
タイトル通りの、主人公と同学年の女の子たちだけではなく、下級生や教師、社会人から風俗嬢にいたるまで、総勢14人の多彩なヒロインが登場します。
メインヒロインは先負学園のマドンナで、主人公の憧れの人でもある桜木舞。学業優秀でスポーツも得意、文武両道を地で行く良家のお嬢様です。学内で問題児扱いされている主人公にも分け隔てなく接するなど、性格の良さも抜群。セミロングのストレートヘアにヘアバンドという出で立ちは、同級生の発売から数年後に大ヒットした恋愛シミュレーションゲームのメインヒロインとよく似ていますが、同級生の影響を少なからず受けているのではないかとゲームファンの間では言われています。
その舞をも凌ぐ人気となったのが、陸上部のエースで「バンビちゃん」のニックネームを持つ田中美沙でした。ゲーム序盤はナンパ男の主人公を毛嫌いしていた彼女ですが、ある出来事をきっかけに彼に惹かれていきます。同じく主人公に恋をしている親友・鈴木美穂との板挟みに葛藤しながらも、徐々に自分の思いを受け入れていきます。当時まだ「ツンデレ」という言葉はありませんでしたが、彼女は元祖ツンデレヒロインの一人と言えるでしょう。
ちなみに、エンディングで恋人として選ぶことができるヒロインは1人だけですが、ゲームの進め方によっては一度のプレイで複数のヒロインとセックスに持ち込む「同時攻略」が可能です。ゲーム内の時間やお金を効率的にやりくりする必要がある上、美沙と美穂のように同時攻略が不可能なヒロインがいるため、一度のプレイで全員を攻略することはできません。
PC版のヒットを受けて、1995年には家庭用ゲーム機・PCエンジンに移植されます。家庭用の中ではアダルト表現の制約が比較的緩かったPCエンジンですが、さすがにPC版と全く同じ内容というわけにはいかず、マイルドなものに改変されています。また、家庭用オリジナル要素として、桜木舞の妹である桜木京子など、3人の新キャラクターが追加されています。
翌1996年には、PCエンジン版をベースにしたセガサターン版「同級生if」が発売されました。当時の最新ゲーム機にふさわしく、PCエンジン版よりもグラフィックやサウンドの質が大きく向上しています。
1999年には、グラフィックやシナリオに大きく手を加えたWindows版が発売されます。時代を反映してか、ヒロインのスリーサイズが全体的にボリュームアップされました。難易度も調整され、「一度選んだ選択肢はパパも絶対迷わない」略してI・P・Z・Sシステムによってスムーズに攻略が進められるようになりました。
2021年に発売されたリメイク版については、のちほど改めてご紹介します。
『同級生2』について
待望の第2作目は、1995年に発売されました。基本的には前作のゲームシステムを踏襲していますが、少ないクリック数でマップ上を移動できたり、セーブスロット数が増えていたりと、快適に遊べるような変更が加えられています。
今作で描かれるのは、八十八学園に通う主人公の、高校3年の冬休みです。ストーリー上は12月16日から1月6日までの3週間ですが、最初の1週間はプロローグで消費されるため、プレイ期間は前作よりも短い2週間となっています。そのため前作よりも難易度は高く、同時攻略の条件もシビアです。
同級生2のシナリオは、ナンパゲームをラブストーリーへと脱皮させた前作のコンセプトを継承しつつ、さらに発展させ、前作以上にドラマ性の強い物語に仕上がっています。
本作のメインヒロインは、幼い頃から主人公と一つ屋根の下で生活し、血縁関係はありませんが同学年の彼を「お兄ちゃん」と呼んで慕う成沢唯です。主人公からヒロインにアプローチして恋愛を進展させていくのが同級生の基本パターンですが、唯に関しては、家族同然の彼女を大切に思っているがゆえに、主人公の方が恋愛感情にブレーキをかけてしまうという展開になります。待ち受ける多くの障害を乗り越えて結ばれることはできるのかが、唯ルートの見どころと言えます。
もちろん唯以外にも、個性的で魅力的なヒロインたちが数多く登場します。特に目を引くのは、一人だけ前作から続投となった田中美沙でしょう。前作の主人公と一度は結ばれたものの、喧嘩の末に彼と別れてしまった彼女は、親友の鈴木美穂を頼って八十八町を訪れ、元彼と似た雰囲気を漂わせる主人公と出会い、惹かれていきます。
また、唯の母親である成沢美佐子や、主人公たちが卒業旅行で訪れる旅館の女将・永島佐知子など、年齢は明言されていないものの主人公よりもだいぶ年上であろうヒロインまで用意されており、前作以上にバラエティに富んだ顔ぶれとなっています。
前作と同様、本作も多くのゲーム機に移植されました。
1996年にはPC-FX版が、同ハードでは初の18禁指定で発売されます。ただし、PC版に比べると内容はややソフトに変更されています。
1997年にはセガサターン版、プレイステーション版、そして、まさかのスーパーファミコン版が立て続けに発売されました。特筆したいのはプレイステーション版で、ヒロイン12人のフィギュアを同梱した豪華版「EXTRA BOX限定版」は、そのパッケージの巨大さが今も語り草となっています。
『同級生3』について
1作目、2作目が立て続けにヒットすれば、ファンから3作目の発売が期待されるのは当然の流れというものです。その期待に応えるべく、1996年には同級生3の開発が発表されます。
ゲーム雑誌には、ヒロインたちの姿が描かれた広告が掲載され、ファンは発売を心待ちにしていました。しかし、新作のスケジュール表に書かれた同級生3の発売日はずっと「未定」のまま、時間だけが過ぎていきます。
その後もゲーム雑誌で断片的な情報が小出しにされましたが、遂に同級生3が発売されることはありませんでした。
なぜ同級生3は発売されなかったのか、関係者の口から詳しい経緯が語られたことはありません。その後のエルフが辿った運命を考えると、もしも同級生3が予定通りに発売されていたら……と思わずにはいられません。
『同級生リメイク』について
2016年、エルフは公式サイトの閉鎖を発表します。2000年に創業者の蛭田氏が去り、新作ゲームの発売ペースが徐々に落ち、数年前にはほぼ全スタッフが退社・移籍していました。主要タイトルの権利はDMM GAMESに移管され、翌2017年には唯一残されていたユーザーサポートのページも閉鎖されます。エロゲ業界のトップを走り続けたメーカーの、あまりに静かで寂しい幕切れでした。
さらに時は流れて2021年。エルフの活動終了よりも唐突なタイミングで、同級生のリメイクが発表されます。
発売元はFANZA GAMESですが、開発には元エルフのスタッフが所属するシルキーズプラスが協力しました。オリジナル版に近いシステムの「クラシックモード」の他に、好感度の増減を確認できるなど快適さを重視した「イージーモード」が用意され、現代のユーザーも遊びやすいように配慮されています。
ゲーム内容に関しては、オリジナル版の意図を尊重するというプロデューサーの意向により、Windows版から大きな変更は加えられていません。例えば、セックスシーンが射精に至らずフェードアウトしていくというのは、実用性を重視した現代のエロゲではほとんど考えられないことですが、同級生にはこのようなシーンがいくつかあります。
レビューサイトには、この点に対する不満や困惑の声が寄せられていました。ただし、否定的なレビューの多くは酷評というよりも、「グラフィックやシナリオがいいだけに惜しい」というものです。それだけ同級生というタイトルへの期待が大きかったということでしょう。
原画家は竹井氏から、漫画家のすめらぎ琥珀氏へとバトンタッチしています。肉感的な女性の描写に定評があるすめらぎ氏ですが、キャラクターデザインには最低限のアレンジを(田町ひろみのヘアスタイルなど)加えつつ、オリジナル版の雰囲気を損なわないグラフィックに仕上がっており、新旧のユーザーから好評で受け入れられました。
エロゲとしてのボリュームは賛否が分かれたものの、同級生リメイクの最大の収穫は、DMM/FANZAが同級生というタイトルを大切に扱っているという姿勢が確認できたことでしょう。将来的には同級生2のリメイク、さらには(非常に困難な作業であることは容易に想像できますが)幻に終わった同級生3のリブートまで期待してしまうのは、さすがに先走りすぎでしょうか。
まとめ
同級生シリーズの歴史を振り返ってきましたが、一世を風靡した名作といえども、現代の価値観や倫理観で見ると、どうしても理解しにくい部分や、物足りなく感じる部分が出てきてしまうことは否定できません。
同級生シリーズの魅力はむしろ、ゲームを起動すればいつでも、1990年代の先負町や八十八町に帰れるということではないでしょうか。どれだけ時代が変わっても、恋愛の楽しさや苦しさ、青春時代の甘酸っぱさやほろ苦さが変わることはないでしょう。
エロゲ史に燦然と輝く古き良き名作、同級生。その魅力が色褪せることはありません。